獄中記/佐藤優

著者の520日に渡り4畳の独房に閉じ込めれていた獄中記。

獄中で綴られた本は何冊か読んでいますが、追い詰められた人間が綴る文章というものは非常に興味深いものが多い。著者は獄中生活を経てから作家に転身、いまでは「知の巨人」と呼ばれるほどの人気作家です。

250冊近くの本を読み、400字詰め原稿用紙5000枚、大学ノート62冊分のメモを作成したというだけあり、今まで読んだ本の中で一番留置所内の規則や情景、売っているものの値段まで、これでもかというくらい、とても詳細に綴られています。

そして一番興味深く思ったことは「国策捜査」です。

著者が元官僚と言うこともあり、とても分析され論理的に記述されています。

普通の捜査は、犯罪を摘発するために行う。それに対して国策捜査とは、政治的思惑から、まず特定の人物をターゲットに設定。ターゲットに設定された鈴木宗男に検察は犯罪を見出そうとするか、見出せない場合には犯罪を創出する。

国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために象徴的な事件を摘発する(もしくは創る)。鈴木宗男の事案は、政治力で公共事業を誘致するという日本型社会民主主義(田中角栄型政治)を終焉させるという意味をもつという。

それにより規制緩和、新自由主義的改革を進めるように「時代のけじめ」をつけようとする思惑が検察にあった。

ホリエモン(ライブドア)事件の場合は「稼ぐが勝ち」「カネで買えないものはない」というような行きすぎた新自由主義に、歯止めをかけたいという思惑を検察はもって、堀江貴文氏(当時ライブドア社長)を逮捕したという。

私が国策捜査の対象になることは、ほぼ無いとは思いますが「国策捜査」関連の書籍はたくさんあるようなので、なにか違う本も読んで見たいと思います。笑

9th in October / 277 th in 2022