なぜ日本人は落合博満が嫌いか?/テリー伊藤


テレビで目にするテリー伊藤。私が良く目にするのは「サンデー・ジャポン」だろうか。テリー伊藤が考える、落合博満。彼の発言。野球に対する姿勢や奥深さ。そして人間力が事細かに綴られています。

世間に流されず、常識と言われている、過去のセオリーも完全無視。

名球会入りを拒否したり、キャンプ初日から紅白戦など。

どんなに批判を浴びようが、報道陣には口を開かない。

星野仙一監督のように感情をむき出すわけでもなく、

野村克也の様に言葉巧みにサービスするわけでも無い。

最大のファンサービスは「勝つこと」

実際の監督在任期間の中日は強かった。笑

なのになぜ日本人はなぜ、落合褒めないのか。そして嫌うのか。

前に読んだ「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか/ 鈴木忠平」でも本の題名になるほど、少なくとも好かれているイメージは無い。笑

そのため、テリー伊藤曰く

「日本のマスコミは、誰かのネガティブな面をとらえて、そこをクローズアップすることにかけては天才的な能力を持っている。

そのおかげで、日本人全体が批判の天才になってしまった。」

しかし、その反面、ポジティブな面を見出して評価することが、どんどん苦手になってしまった。

いまこそ、「ネガティブなことだけが鮮明に見えるメガネ」を外し、まっさらな目で落合監督に目を向けるべきと説いています。

本書は平成22年、落合が中日監督時のものです。その後の中日成績の実績もあるので当時より印象は改善しているかもしれませんね。

落合監督の采配のなかで、もっとも有名なのは、あの日本一を決めた日本シリーズでの投手交代です。

2007年、日本シリーズ「中日vs日本ハム」第5戦。中日は第1戦に敗れた後、3連勝。この試合で勝てば優勝が決まる。

落合監督が先発に指名したのは、肩の故障がやっと癒えたばかりの 山井大介 投手。「山井は、何回まで持つのかな」

そんな落合監督の心配をものの見事に吹き飛ばし、8回までパーフェクトピッチング。1対0の中日リードで迎えた9回表。落合監督は迷うことなくリリーフエース 岩瀬を投入した。

そのとき、ナゴヤドーム全体が「おお!」と、どよめいたのも当然だ。あとアウト3つとれば、山井は日本シリーズ史上初の完全試合を達成できるのだ。

観客は歴史の証人になる一歩手前で、その機会を逃した。

それでも、ここで岩瀬はピシャリと3人で抑え、中日ドラゴンズは53年ぶりの優勝という、もうひとつの歴史をつくって見せた。

この投手交代には賛否両論が飛び交い、世論を二分する騒ぎとなった。

その年のシーズンオフ、著者は落合監督に、このときの決断について聞くことが出来たと言う。

パターンは4つあった。

①山井続投 → 抑える

②山井続投 → 打たれる

③岩瀬交代 → 抑える

④岩瀬交代 → 打たれる

①と②は落合が批判されることがない選択肢だっただろう。

最大の批判は④

それを承知の上、勝利にこだわり選択した③。

山井本人はもちろん、チームメイトも全て納得していた印象のコメントを残しています。

この采配については「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか/鈴木 忠平」の中でベンチの中でみてたのでは無いかというような描写を体験済みだったので、とても興味深く読ませて頂きました。

最後に著者がこんな事を書いています。

落合が中国に頼まれて、中国代表監督になり、日本が負けたときどう思うのか。シンクロの監督が中国の監督になり、メダルをもたらした実績もあるので現実離れした話でも無いだろう。

散々悪口を叩いておいて、失われてから偉大さを再確認する偉人が多い。

エルビス・プレスリー

マイケル・ジャクソン

失う前に、落合博満の偉大さをもっと尊重するべき。

野球の偉人はたくさんいますが、川上、長島、王。

並べるどころか、その上に、

落合も加えるべきなのでは無いのかと思えるそんな1冊でありました。

8th in August / 219th in 2022