虚空の人 清原和博を巡る旅/鈴木忠平

著者の前書「清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実」は清原本人の記述はあまりなく、甲子園で清原にホームランを打たれた元高校球児を取材。どんな思い出を語るのか。その後の人生にどのような影響を与えたのか。そんな内容でありました。

本書は、薬物依存症そして鬱で苦しむ清原氏を描写しつつ、少年時代のチームメイト、PL学園のスカウト、薬物依存症をサポートする人や通う店など。清原氏以外の人間模様や人生観まで。とても興味深く読ませて頂きました。

著者本人が居た場面の描写は自分が主人公になった小説のような、やり取りから臨場感などお見事な描写です。

自分が居なかった場所でも、取材により執筆したのでしょうが「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」での日本シリーズ優勝決定のベンチ内の様子の様に、透明人間で現地にいたのでは無いかと思わせてくれるような描写でございました。笑

【虚空・こくう】

私は少なくとも普段、耳にしないし使わない言葉です。

何もない空間。大空。「―に消える」「―にのぼる」

 仏語。何も妨げるものがなく、すべてのものの存在する場所としての空間。

そんな意味だと言う。

本書で清原氏は、おそらく多くの人が隠そうとする自分の汚点や弱い部分。それらをあえて無防備と言うか、自然に晒しています。

その現在の状況、そして少年時代からプロ野球の栄光。

相反するその2つがセットになるからこそ、寄り添う人がいる。

そんな物語ではないのか。

「虚空」という、過去の栄光が全く抜け落ちたヒーローの、

覚醒剤で逮捕から、執行猶予の終了まで。

本人の葛藤はもちろん、取り巻きの環境、それらのルーツまで。

すべて感じせてくれる1冊でありました。

読書の連鎖は「プロ野球沼」に突入しようと思います。笑

1th in August / 212th in 2022