癒し屋キリコの約束/森沢明夫

森沢明夫さんの作品は5冊くらい読んでいますが、

必ずと言っていいほど、

「ヒカルの卵」の居酒屋の様に、

物語の中心となる場所が存在する。

元カウンセラー、飲んだくれキリコが営む

昭和歌謡が流れる喫茶店。

いろいろ癖のある常連が集まる。

そこで繰り広げられる人間模様からの

ちょっと風変わりなミステリー。

「癒し屋」と言うことで喫茶店に訪れる人達の

悩み事やトラブルを解決してあげる。

そして小説の中に組み込まれる自己啓発的エッセンス?

常連の女の子が自殺すると

店長に電話してくる場面がある。

店長はキリコに電話して相談。

死ぬ前に彼女にクッキーを焼くことをお願いし、

朝に家に取りに行くと、連絡することを店長に指示。

そして朝、常連みんなで彼女の家に行く。

おいしい。ありがとう。と、みんなで褒めちぎる。笑

そして彼女は「馬鹿らしくなった」と自殺をやめる。

人間は他人に「ありがとう」と言われるために生きている。

人の役に立って、喜んでもらえたときには、

その人の使命が果たせる。

使命が果たせた時、人は自動的に幸せになってしまう。

幸せを感じながら、死ねるわけ無いでしょ。

自殺をほのめかす人に対して命令するのか。

そんな事を感じるが、キリコの突拍子も無い指示も含めて、

いい加減なところもあり、酒に溺れる様。

お金に意地汚い不思議な人間像。

たいへん楽しませてくれる1冊でありました。笑